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睡眠薬の離脱症状を克服して断薬する方法

睡眠薬の離脱症状と断薬方法

睡眠薬単独の断薬であれば、比較的簡単にやめれます。
しかし、睡眠薬だけでなく、安定剤や向精神薬、抗うつ薬など複数の薬を服用している方も多数います。
そういった場合は、順番に断薬していく必要があります。

もちろん、うつ病や統合失調症などの基礎疾患がある場合は、自己判断で断薬しないでください。
うつ病が良くなって初めて抗うつ薬の断薬を開始します。そのため、まずはしっかりと治療行ってください。

うつ病が良くなったにもかかわらず、長期間抗うつ薬やベンゾジアゼピンを服用している方もいます。
離脱症状もあり、薬をやめることができないためです。

そういった場合は、適切に減薬行って断薬をしていきましょう。

薬の断薬方法

まず、複数の薬を服用している場合は、順番に断薬を開始して最後に睡眠薬を残すようにします。

抗うつ薬と安定剤、睡眠薬を服用しているのであれば、まずは抗うつ薬を断薬します。
SSRIであれば、2週間ごとに徐々に減らしていきます。

フルボキサミンを例に挙げましょう。1日75mgを服用していたとします。
2週間ごとに、25mgずつ減薬して、最終的に断薬します。
断薬できれば、次の安定剤と睡眠薬の断薬を開始します。

SSRIの減薬において、離脱症状が辛い場合は、3~4週間と減薬するスピードを落とします。
また、減薬する量をさらに細かく減らしていくことも方法として考えられます。

抗うつ剤が断薬できたら、次は日中の安定剤を断薬します。
一般的に、処方されてる安定剤は以下のようなものが多いです。

  • デパス
  • ワイパックス
  • レキソタン
  • メイラックス
  • セルシン
  • ソラナックス

以上が処方される安定剤としては、全体の殆どの割合を占めています。

この中でも、デパスは特に離脱症状が強い安定剤です。次にソラナックスやレキソタンといった具合でしょうか。
ワイパックスは比較的離脱症状は中程度~軽い方です。

セルシンやメイラックスは、血中半減期が長いため徐々に体から薬が抜けていきます。
そのため、不安やイライラといった離脱症状は軽い方です。

日中の安定剤は一気に断薬して、睡眠薬だけを残すようにします。
日中の安定剤を断薬すると、翌日から数日にかけて、不安やイライラ、落ち着かないといった離脱症状が現れます。
しかし、時間とともに離脱症状が軽減していきますので安心してください。
ここではしっかりと睡眠薬を使って体を休めて眠るようにしてください。

1週間もすれば、安定剤による離脱症状は消えます。
もともと、安定剤も徐々に減らしていくという方法もありますが、だらだらと続けるよりは一気に断薬する方が好ましいです。
睡眠薬だけは残っているため、不眠症だけは対応することが可能です。
日中のイライラや不安は数日から1週間で消失するので焦らず待ちましょう。

ここで断薬する際にポイントがあります。
多種類の安定剤を服用している方は、一気に断薬するよりは、2週間ごとに種類を減らしていきましょう。
基本的に安定剤も単剤投与が大切ですが、人によっては2種類服用している方もいます。
その場合は、まずは1つに減らすことが大切です。

医薬品添付文書の定める通常の服用量であれば問題ありませんが、過度に服用している場合は、適切な量までまずは減薬することが大切です。

例として、デパスは一日3mgまでが最大の服用量です。この程度であれば一気に断薬しても、睡眠薬が残っていれば離脱症状は数日から1週間程度で消失します。

それ以上に服用している方は、まずは適切な服用量まで落として、2週間程度様子を見てから断薬してください。

また、アルコールを飲酒している方は、必ず断酒をしてから開始してください。
アルコールは、ベンゾジアゼピン同様にギャバにも作用します。
ベンゾジアゼピンを減薬・断薬しているのに、アルコールをやめなければ、離脱症状は一向に消えません。
そのため、僅かなお酒であっても、減薬・断薬中は飲まないようにしてください。
まずは、薬をやめる前にアルコールをやめることが大切です。

安定剤を断薬して睡眠薬だけが残れば、完全断薬まではあと少しです。
睡眠薬だけの服用にして、2週間程度経過をみます。

その後、睡眠薬をワイパックス1mgに変更します。
ワイパックス1mgは安定剤ですが、鎮静作用も中程度あり、十分に眠れる服用量です。

超短時間型の睡眠薬と違って、服用後すぐに血中濃度が上がるわけではありません。
そのため数十分で寝付くことができにくいですが、2~3時間かけて寝付くことができます。

そもそも、超短時間型の睡眠薬は、数十分も経つと意識を失ったように入眠します。
自分で眠る感覚を掴むことができません。一方ワイパックスは、2時間程度で血中濃度が最大に上るため、入眠まで2~3時間掛かりますが自力で眠るという感覚を掴むことができます。

また、臨床的に言ってもワイパックスは比較的断薬しやすい薬に分類されます。
もちろん離脱症状は伴いますが、睡眠薬に比べても、まだ断薬しやすい方です。

セルシンを使って断薬する方法もありますが、この薬は体内に残り続ける期間が長いため、弱い離脱症状が続きます。
僅かにでも体内にベンゾジアゼピンが残り続ける限りは、中々不眠症などが回復せず、自然に寝付くという力が元に戻りません。
無駄に体内に薬を留めるよりは、短時間型の安定剤を使って一日程度で体から抜ける方が良いです。

ワイパックスは薬の半減期も12時間程度なので、1日もあれば大部分は体内から消失します。
そういった意味でも、ワイパックスを断薬に使用しています。

ワイパックスを使用した断薬方法

少し話は逸れますが、布団に入った時に中々寝付けずに「寝よう、寝よう」と考える人がいます。
これは大きな間違いです。交感神経を高ぶらせて、余計に眠りづらくなるため「何も考えないこと」が大切です。

「眠ろう眠ろう」とするのではなく、特に何も考えずゆったりしていると、自然に寝付けるものです。
眠るときは何も考えない、例えそれができなくても余り考えないで、気持ちの流れに身を任せることが大切です。

話を元に戻します。ワイパックス1mgを一週間程度服用を続けます。
そこから、ワイパックス0.75mgにまで落とします。

ワイパックス0.75mgの作り方

このワイパックス0.75mgは、個人差もありますが、一般的な成人であれば2~3時間掛けて眠りにつけるだけの効力があります。
この0.75mgが就寝できる限界点では無いでしょうか。

ワイパックス0.5mgにまで落とすと、多くの人が寝付けなくなります。逆に1mgだと、わずかに眠るためには多い量です。
そのため、ワイパックス0.75mgを断薬する限界点に定めています。

このワイパックス0.75mgは、離脱症状を最小限に食い止める量でもあります。
ここまで、減薬が進めば眠りが浅いものの自然に寝付ける力は大体は回復してきています。

ワイパックス0.75mgを1週間服用したら、今度はその時から一気に断薬します。
ここで再度細く減薬して眠れなくなるよりは、限界点で一気に断薬して自然な眠りを回復するためにも、一気に断薬が重要です。

ここまで経過すれば、離脱症状を最小限に抑えて、自然に寝付けるようになります。
ワイパックスを完全に断薬して数日から1週間程度は、特に眠りが浅い期間です。
この時は、寝付く時の記憶や大部分の夢を覚えていることもあります。

人によっては、眠りが浅く、寝付くのに時間がかかる場合もあります。それでも、薬やめる強い決意が大切です。
ここで再度服用してしまえば、また振り出しに戻ってしまいます。必ず、自分で寝付く力は元に戻りますので諦めないでください。

睡眠薬や安定剤を一気に断薬したのであれば、眠れない日々が何週間も続き断薬は容易ではありません。
しかし、ワイパックス0.75mg程度であれば、浅い眠りが続くものの、自力で眠る力は後1歩のところまで来ています。

概ね1週間程度経てば、まとまって6時間程度眠れるようになるでしょう。
もちろんまだ眠りは少し浅いですが、日に日に良くなっていることに実感できるはずです。

断薬からこの1週間を如何にして乗り切るかが重要です。ここを乗り切れば、殆どの方が断薬を成功します。
2週間程度経過すると、7割程度は回復しています。

月を追うごとに、自然に眠る力は元に戻り、より良い睡眠が取れるようになります。

薬が体に入って来なくなれば、自分で眠れるように体は変化していきます。変化している間は、離脱症状として眠りが浅かったり、寝付きにくくなったりしますが、最終的に自分で眠れるように完全に回復します。

薬の断薬を成功するポイントとしては、就寝する時間をしっかり定めましょう。
例え寝付きにくいとしても、夜の22時や23時にはベットや布団に入ることが大切です。
断薬中は、毎日決まった時刻を定めて眠るようにします。これにより、寝るということを意識付けて、ON/OFFを明確にします。

また、断薬から最初の1週間は眠りが浅いですが、早起きするようにしましょう。
早寝早起きの規則正しい生活は大切です。眠りが浅い、寝ている時間が短いからといって遅い時間まで起きていることは好ましくありません。起きている時間が短いとその日の晩寝付けないためです。

日中に仕事や学業がある方は規則正しい時間に起きて、寝ることができるため、断薬するには良い環境です。

断薬中に再度薬を一錠でも飲むと、また振り出しに戻って服用を開始してしまう恐れがあります。
そのため、断薬から2週間程度は峠だと思って、乗り切るようにしてください。

ここを乗り切ることができれば、自然に寝付く力は元に戻り、睡眠薬に依存することもなくなります。

断薬のまとめ

  • 基礎疾患が良くなれば、抗うつ薬や向精神薬を減薬して断薬する。(2週間ごとに減薬)
  • 安定剤を断薬して、睡眠薬だけ残す。(2週間)
  • 睡眠薬をワイパックス1mgに切り替える。(1週間)
  • ワイパックス1mgをワイパックス0.75 mgに減薬する。(1週間)
  • ワイパックス0.75 mgを一気に断薬する。
  • 数日から1週間程度は浅い眠りや寝付きが悪い症状が発生するが、この期間を確実に乗り切る。
  • 2週間程度するとまとまって眠れるようになる。
  • 1か月程度である程度熟睡できるようになる。
  • 個人差はありますが数ヶ月から半年程度で完全に自力で眠れるように回復します。

ベンゾジアゼピンは、不安や神経症、うつ病にとても効果がある薬です。
しかし、服用を開始して症状が良くなれば、適切に断薬するということが大切です。
しっかりと断薬する方法を知って、自分の力で眠れるようになることを願っています。

睡眠薬の離脱症状を克服して断薬する方法はベンゾジアゼピン断薬マニュアルの第三章に当たる文章です。この内容は医療情報サイトの「心の治療ナビ」で公開していました。