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ベンゾジアゼピン系睡眠薬の依存症レベルと断薬

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の依存レベルについて

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は不眠症や不眠症を伴う疾患に服用すると効果的です。しかし、服用を開始したなら、しっかりとやめることを念頭に治療プロセスを組む必要があります。また、睡眠薬の服用は出来る限り短期間に留めることが大切です。

しかし、現実的に漫然と長期間服用している人も多く、薬には依存性があるため断薬できない人も多いのが事実です。

ここでは、睡眠薬の依存レベルを知って、自分がどの段階にいるのか詳しくチェックしていきましょう。

睡眠薬とは

睡眠薬は精神科だけでなく、内科や整形外科など幅広く処方されています。診察で「最近、眠れていないです。」「たまに眠りが浅いです。」などと言えば、容易に処方される傾向にあります。良く処方される睡眠薬は、「マイスリー」や「レンドルミン」などです。

最近は睡眠導入剤といった名前に変更されたり、睡眠薬のポジティブなイメージ転換から、睡眠薬への敷居が低くなり、多くの人が服用しています。

しかし、睡眠薬の問題点は「依存症」や「離脱症状」にあります。最初の内は、十分に眠れていても薬の効きが落ちてきたり、薬をやめると眠れなくなるなどデメリットもあることを忘れてはいけません。

睡眠薬を服用したことが無い人が初めて服用すると、非常に強い鎮静効果から熟睡できることでしょう。体がふらついて起きていることができないと思います。このときの感覚は成功体験として脳に刻まれます。
また、眠れない日になれば再度服用して容易に依存してしまいます。やがては「精神的依存」と「身体的依存」が形成されて簡単に断薬できなくなります。

依存レベル

睡眠薬の依存を5段階に分けました。自分がどの段階にいるかしっかりと把握しましょう。

1.無期

睡眠薬を服用していない段階です。

2.初期

睡眠薬の服用をしているが断薬しても自然に寝付ける状態です。
睡眠薬は服用期間を限定して、短期間に服用すべきです。この時期にしっかりと断薬します。

3.依存期

睡眠薬を服用して眠れるがやめると眠れない。
睡眠薬を服用していると多くの人がこの段階に移行します。
既に依存が形成されているため断薬は容易ではありません。服用している方は薬が無いと眠れないと自覚しているはずです。正しい用法用量を守る限りは薬の効果は持続します。しかし、何かの歪みで衰退期や末期に移行しかねないので注意が必要です。

4.衰退期

睡眠薬の効果が不安定になり、眠れる日と眠れない日が出てきます。
ベンゾジアゼピンを多剤服用している方や服用量を守っていないと薬が安定的に効かなくなってきます。また、期間服用している人もこの傾向になります。

既に熟睡した睡眠は取れなくなって来ているので、この問題を根本的に解決するためにも断薬すべき時期です。

しかし、簡単には睡眠薬を断薬することができないため、鎮静作用のある「抗うつ薬」や「抗精神薬」を併用する人も増えてきます。
こうなると、他の副作用や依存症がますます問題になります。

5.末期

末期の不眠症の断薬方法

睡眠薬を服用しても全く眠れなくなります。ここまで来ると様々なリスクを伴うため、早期に対策を考える必要があります。何故、このような事態になったのか客観的に考えてください。早期に断薬に向けたプロセスは歩むべきです。

長期間高用量に薬を服用して、全く眠れない状態になったとします。しかし、適切に断薬を行えば必ず自力で眠れるようになります。人間は本来自然に眠る力を持っています。一時的に薬の影響で失われているだけですので、しっかりと取り戻してください。

なお、断薬方法は過去記事で紹介しているので参考にしてください。

コラム

重度の不眠症患者さんで全く眠れない状態になり診察に来られた方がいます。
話を聴くと最初はベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用していたものの、眠りが浅くなり「安定剤」や「抗うつ薬」を追加して寝ていたようです。しかし、最終的に全く薬の効果が効かずに寝れない状態になりました。

本人は「どうにか眠れる薬を処方して欲しい。」「強い睡眠薬が欲しい。」と話しておられました。ここで、薬を増やしたり系統を変えることは簡単です。再度睡眠効果も現れるでしょう。

しかし、根本的な解決に成らないことは言うまでもないありません。一時的に良くなったとしてもまた眠れなくなることは目に見えています。

本人に断薬することの大切さを伝えて、薬を徐々に減らしていきました。数ヶ月後には完全に断薬に成功しました。

重要なことは、本人が薬を断薬する意志を持つこと適切に減薬することです。

今まで睡眠薬を服用しないと眠れない人が断薬しても眠れないままといったケースは一度もありません。多かれ少なかれ離脱症状は伴いますが克服できれば必ず自然に寝付けるようになります。

離脱症状は数週間が最も強い時期です。ここを乗り越えられれば成功したともいえます。数ヶ月後には自然に寝付けるようになっています。問題は人によっては不眠以外の離脱症状が続くことがあります。目眩や動悸など人によっては様々です。全体の数%程度ですが高用量に長期間服用していた場合に多い傾向にあります。いずれにせよ月を追う毎に症状は消えていきますので、焦らずに良くなると信じて断薬を続けてください。

なお、薬を断薬するときは他の疾患がある場合には注意が必要です。例えば、うつ病が完治していないのに抗うつ薬を自己判断で断薬してはいけません。うつ症状が再熱することも考えられます。
統合失調症やてんかんなども同じです。医師の指示に従ってください。最近は抗てんかん薬もベンゾジアゼピン系以外に良い薬が開発されていますので一度医師に相談すべきです。

まとめ

ここ15年程でベンゾジアゼピン系睡眠薬や安定剤を服用する人が増えたなと思います。病気の症状がある場合は服用することが大切ですが、同時に薬をやめることも視野に入れなければなりません。

風邪薬は一時的に服用して誰でもやめます。しかし、ベンゾジアゼピン系睡眠薬や安定剤は依存性があるため断薬できずに漫然と服用を続けてしまいます。その結果、服用する人が右肩上がりに増えているのも納得できます。

しっかりと薬の依存症や離脱症状を知り、適切に使用したいものです。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の依存症レベルと断薬はベンゾジアゼピン断薬マニュアルの第一章に書かれた内容です。この記事は「心の治療ナビ」に掲載した記事を再編集しています。