レーシックの失敗と後遺症やリスク
レーシックは角膜にレーザーを照射して、屈折を変えることにより視力を回復させる手術です。
日本では100万人以上の人が手術を受けており、とても人気があります。
成功して快適な裸眼生活が送れる人もいる一方で、失敗して日常生活が困難になる人もいます。
レーシックにおける失敗とは以下のような症状があります。
- 過矯正による遠視
- 視力の再近視化
- ドライアイ
- 不正乱視
- 眼精疲労
- 角膜拡張症(エクタジア)
これ以外にも様々な副作用や後遺症がある手術です。
つまり、裸眼視力を回復するといったメリットを手に入れることができますが、様々なリスクを受ける可能性もあるハイリスク・ハイリターンな手術です。
2000年代はレーシックは視力を回復させる画期的な手術と持てはやされました。当時は失敗やデメリットの情報も無かったため、目に光りを当てて回復する程度の感覚で受ける人が激増しました。また、芸能人や有名人を広告塔にして宣伝していたことも受ける人が増えた要因です。
2010年代になるとレーシックを受けた人の中から徐々に後遺症を訴える人が増えて、「レーシック難民」が生まれ始めます。
この結果、現在においては失敗や後遺症、デメリットが幅広く一般に知られるようになり、レーシックを受ける人は激減しました。しかし、一方ではまだまだレーシックを受ける人も年間1万人程度いるのも事実です。
人間は一つ良いと判断したことは、例えデメリットの情報があったとしても、盲目になりがちです。または、失敗のリスクは自分には関係ないと対岸の火事のように感じてしまうこともあります。
しかし、ふと立ち止まって考えてみると、角膜にレーザーを当てて削るような手術が安全であると言い切るのは明らかに危険だと分かります。
眼鏡やコンタクトレンズであれば、やり直しは何回でもできますが、レーシックは一発勝負です。失敗して後悔しても、人生を取り戻すことは困難です。更に、眼は生活や仕事をする上で重要な器官です。生きる上で最も大切です。
この記事ではレーシックにおける失敗やリスクを解説します。
レーシックの後遺症
レーシックにおける失敗や後遺症は様々な種類が存在します。一つ一つ解説していきます。
ハロ・グレア
レーシックにおける最も発生しやすい後遺症がハロ・グレアです。
光りが滲んだように見えます。例えば、窓ガラスに雨が滴り光りが滲んで見える状態です。
夜間における街中の光りや信号などでは発生しやすく、日中に起こることは殆ど無く不便に思うことはありません。
角膜にレーザーを照射した部分と瞳孔によって、発生します。
いずれにしても、レーシックを受けた人に取っては、宿命とも言える後遺症であり、生涯続くこともあります。
但し、生活に支障が及ぶ症状では無いため、慣れて気にならなくなります。
スターバースト
ハロ・グレアと同様の後遺症で、光りが輝いて眩しく感じます。
夜間に発生しやすく、運転中は対向車のライトが花火のように光って見えます。
人によっては程度の差はあるものの、レーシックにおいては発生しやすい後遺症です。ある程度は慣れるしかありません。
過矯正
レーシックは角膜にエキシマレーザを照射して、視力が±0D(正視)になるように矯正します。
しかし、視力矯正には誤差が生じることが良くあります。過度に矯正されると過矯正(遠視)になり、眼精疲労が発生します。
レーシックは手術直後の近視への戻りや長期間な再近視化を想定して、+0.5D程度になるように強めに照射します。
エキシマレーザの照射による矯正視力は多少の誤差は発生します。最終的に-0.5D~+0.5D範囲に収まれば成功です。
しかし、矯正視力が+1Dを超える眼精疲労が顕著に現れて、日常生活に支障が出てきます。
レーシックでは視力の近視が強い人は、術後の誤差が発生しやすいため、慎重に検討すべきです。
遠視になると視軸がずれて斜視や斜位が発生します。+1D以上の過矯正が残れば、早期に再手術をして対策すべきです。
ドライアイ
レーシックはフラップ作成の際に角膜の神経を切断します。再度固着した神経は再生するのに時間が掛かり、術後半年程度はドライアイが続くことがあります。
人によっては慢性的に何年も続くケースもあります。
レーシックは角膜にフラップを作成します。フラップは一度作成すると完全には固着しません。
いわば、眼にフラップがへばり付いている状態です。
特にイントラレースで作成したフラップは熱溶解により、ダメージが大きいためドライアイが発生しやすくなります。
視力の再近視化
人によっては視力が再度近視化することがあり、初めの内は視力が1.0以上あったものの、数年後には0.3や0.1に落ちる可能性も十分にあります。
視力が再近視化するパターンは主に2つです。
1.新たな近視化が進む。
レーシック後にスマホや近い位置ばかり見ていると新たな近視が進み視力が落ちることがあります。主に近視の進行と調整異常が原因です。
2.エキシマレーザーで角膜を削った凹部分が眼圧に押されて、軽度に球面化することにより近視化する。この場合は、近視を防ぎようがありません。
いずれにしても、生涯安定した裸眼視力を保障することは確実ではありません。
視力低下により再手術する場合は再度フラップをめくる必要があるなど大きなリスクが伴うため、慎重に検討すべきです。
眼精疲労
今まで徐々に適応してきた視力をレーシックで一気に変化さするため、脳や体が対応できずに眼精疲労が起こることもあります。
また、過矯正では眼に負担が多く、眼精疲労が起こりやすくなります。
不正乱視
照射ズレや照射角度のズレ、眼球運動、低性能なエキシマレーザーなどの要因により、照射が適切に行われずに不正乱視が発生することもあります。
角膜拡張症(エクタジア)
角膜の強度が耐え切れずに前に突出する症状です。非常に稀ですが、発生すれば極端に視力が低下します。
レーシックは角膜拡張症を防ぐためにも、角膜の厚みを350μm以上になるようにガイドラインが設けてあります。
但し、350μm残したからといって、角膜拡張症を確実に防げる保障はどこにもありません。
その他
これらの後遺症以外にも様々な症状があります。
- フラップのシワや損傷
- 頭痛
- 眩しさ
レーシックの種類
レーシックにはマイクロケラトーム(刃)でフラップを作成する通常のレーシックとレーザーで作成するイントラレーシックがあります。
マイクロケラトームは値段は安く、イントラレーシックは高い傾向にあります。どちらの術式が良いか比べてみます。
フラップの厚み
- レーシック・・160ミクロン
- イントラレーシック・・100ミクロン
単純にフラップが薄ければ良い訳ではありません。フラップが80ミクロンを下回ると破れやすくシワが入りやすいなどのトラブルが起こります。一定の厚みは必要です。
強度近視の場合はエキシマレーザーで角膜実質層を削る量も多いため、フラップが薄いイントラレーザーはより重度の近視にも対応できます。
フラップのダメージ
- レーシック・・ダメージは少ない。
- イントラレーシック・・ダメージが大きい。
通常のレーシックは刃で角膜をスライスしてフラップを作成します。切断面は鋭利で滑らかです。
イントラレーシックはレーザーを使ってフラップを作成しますが、切断面は熱溶解で溶けてダメージが大きいです。
フラップ作成の難易度
- レーシック・・熟練した技術が必要。
- イントラレーシック・・技術は不要。
マイクロケラトームは経験や技術が必要です。ある程度スキルが必要になります。
イントラレーザーは取り扱いが比較的簡単です。自動でフラップを作成します。
比べた結果
フラップに関しては、マイクロケラトームで行うレーシックの方が安全で術後のドライアイが起こりにくくなります。
エキシマレーザーの種類
エキシマレーザーには様々なメーカーが存在します。どのレーザーも機能は優れていますが、差があるのも事実です。
優れたエキシマレーザーの定義とは、「照射時間が短いこと」「トラッキングの精度が優れていること」が主な評価点です。
照射時間が短いと患者の負担も軽くなります。トラッキング精度が高いと、より完璧な手術が行えます。
例えば、以下のようなエキシマレーザーがあるとします。
- 1.トラッキング精度が100点、照射時間が10秒。
- 2.トラッキング精度が100点、照射時間が20秒。
- 3.トラッキング精度が80点、照射時間が10秒。
明らかに1番が優れていることが分かります。
エキシマレーザーは新品で高性能な機器を購入するとなれば約1億や2億円は必要になります。中古であれば数千万円程度です。年間の維持費も500万円以上必要で、コストがかなり掛かります。
*価格や費用はエキシマレーザーの種類にもよります。
実際に優れたエキシマレーザーの一例を比較します。
アレグレット>ビジックスター>ニデック
この順番になります。(2012年頃の性能を参考値としています。)
アレグレットの中でも業界で一番信頼されているのが、「ALLEGRETTO WAVE Eye-Q(Alcon社)」です。アイトラッキング性能にも優れていて、照射時間が短いのが特徴です。-3~4D程度であれば、5~7秒程度です。レーザー照射の際はエネルギーのロスを少なくして、自然な角膜形状に沿って照射します。
アレグレットには「アマリス」もあります。7次元から照射するタイプのレーザーです。高性能ですがエネルギーが強く、術後は過矯正に成りやすいとも指摘されています。
どのクリニックも自院のレーザーが最高性能とインターネット上で紹介しますが、これらを鵜呑みにしてはいけません。メリットばかりに目が行きがちですが、それが正しいと判断するのは危険です。
いずれにしても、マイクロケラトームによる高性能なエキシマレーザーを使用して、信頼できる医師が行うレーシックが最も安全で成功するための条件です。
失敗した場合の対処法法
レーシックは成功すれば快適な裸眼生活が送れます。しかし、失敗した場合は後戻りはできません。後遺症を抱えれば日常生活や仕事が困難になります。術後の治療や対処方法も限られるのが現実です。
まず、後遺症が発生した場合は原因が何なのか判明することが大切です。例えば、眼が見えづらいのであれば、以下のようなケースが考えられます。
- 近視が残っている。
- 過矯正により遠視が起きている。
- レーザーの照射ずれにより不正乱視が発生している。
など、いくつかの要因があるため、原因を正しく知る必要があります。医師にしっかりと説明を求めましょう。また、検査や手術のデータが記載されたカルテはクリニックに開示して貰い、カラーコピーで入手します。
後遺症の原因が判明しても有効な治療法は限られています。後悔しても元には戻せないため、体が慣れることや現実を受け止めて生きていく以外ありません。
術後のドライアイであれば、月日の経過と共に切断された神経が回復して良くなることもあります。一方で、生涯続く人もいます。
過矯正による遠視であっても、数年経過すると視力が落ちてきます。そのため、丁度良い視力になることもあります。逆に術後の視力が1.0~1.5と完全であっても、数年後には下がり見えづらくなることもあります。
自分なりの対処方法を見つけて、眼の状態に適応しながら生活していくことが求められます。なお、再手術をする場合は慎重に検討してください。良くなるケースも考えられますが、更に悪化する可能性もあります。
一旦閉じたフラップを再度めくることはリスクが伴います。フラップのシワ、破れ、炎症が起きることもあります。
視力が低下した場合には角膜の厚みがあれば、再度エキシマレーザーを照射できます。しかし、ハイリスクな手術であり、眼鏡やコンタクトレンズのように安易に度数を変えることはできません。
再手術をした人の中にはドライアイが悪化したり、数年後には視力の再低下が発生したなど、再手術による後遺症も十分に考えられます。
セカンドオピニオンとして、レーシックを行う眼科専門機関に相談にいくことも大切です。アドバイスを貰い、十分に検討した上で慎重に再手術を考えてください。
眼鏡やコンタクトレンズで対処できるなら、再手術は避けるべきです。過矯正であれば、遠視眼鏡を使用しながら、視力の再低下を待つことも検討すべきです。但し、過矯正でも+1.0D以上の遠視であれば、再手術は考えるべきです。
まとめ
レーシックを失敗した場合はリカバリーは困難や絶望的です。クリニック側も低視力に対する対応は万全ですが、他の症状に関しては積極的な治療は望めません。その結果、患者はレーシック難民となり、生涯さ迷うことになります。
レーシックは受けた当初から後遺症が発生する人もいれば、5年10年先に発生する人もいます。言わばレーシックは非常に危険な手術です。結論として、様々なのリスクを考えても受けるべきではありません。
レーシックが始まった当初は眼科医ですら危険性に気づかずに、自身が受ける人もいました。レーシックの後遺症が幅広く知られるようになり、今では受けたいと思う医師は殆どいません。
自分の身を守るのは自分です。術後の人生を歩むも自分です。しっかりと考えて、レーシックを受けないようにすべきです。