眼瞼下垂の原因や症状のチェックから改善する治し方
眼瞼下垂は上まぶたが弛んで下がってくる病気です。
年齢と共に徐々に進行していきます。自覚症状は乏しく一見すると老化と勘違いすることもあります。
但し、症状が悪化すると上まぶたが角膜を覆うようになり、視界が遮られます。眉毛を吊り上げて、見開かないと見えない場合は手術も必要になります。
病気といっても命に関わるような疾患ではないため見過ごされがちですが、正しい眼瞼下垂の知識を知れば、対処方法も見付かるはずです。
自覚症状としては次のような症状が出てきます。
- 瞬きがし辛い、重い
- 視界にまぶたが掛かる
- 眼が開きにくい
- 二重まぶたのラインが広がる又は崩れる
このようなチェック項目に該当する症状があれば、眼瞼下垂を疑う必要もあります。
眼瞼下垂は瞬きの仕方も特徴的で眉毛を吊り上げたり、おでこにシワを寄せて行います。無意識の内に他の筋肉を使って目を見開くようになります。
本人が眼瞼下垂と自覚しにくいのは症状が突然起こる訳ではなく、何年も掛けて進行するためです。その結果、体が不具合に慣れて、それが当たり前になります。
この記事では眼瞼下垂の原因や症状、正しい改善方法や治し方を解説します。
眼瞼下垂の原因
眼瞼下垂の原因は殆どが加齢によるものです。次に多いのが、長年のハードコンタクト装着の影響です。
加齢
眼瞼下垂の原因で最も多いのが老化による「加齢性眼瞼下垂」です。中高年以上が発症します。
歳を取るとまぶたの筋力が伸びて緩んできます。多かれ少なかれ眼瞼下垂は避けて通れないのが現状です。
特に60歳以上になると症状が進行しやすいのが特徴です。男女差はないと考えられています。
コンタクトレンズ
ハードコンタクトレンズを長年に渡り使用していると、眼瞼下垂になりやすいと考えられています。使用していない人に比べても、その差は20倍になります。
もちろん、ハードコンタクトを長年装着しようが全く影響が出ない人も多く、全ての人に当て嵌まる訳ではありません。
原因は諸説ありますが、ハードコンタクトレンズを装着して一日に何千回と瞬きをする内に、まぶたの筋肉が摩擦で伸ばされて収縮力が失われていきます。この結果、上まぶたが上がりにくくなります。
年齢差はなく、若い人でも起きやすいのが特徴です。両目に生じることもありますが、殆どは片目に発生します。
その他
生れつき眼瞼下垂のある人や白内障の手術によって起きることもあります。また、脳梗塞などにより、動眼神経が麻痺するとまぶたが開けられなくなります。この場合は早急に脳神経外科や神経内科に受診する必要があります。
加齢性眼瞼下垂とは
上まぶたには3つの組織が連動しています。
- 眼瞼挙筋(がんけんきょきん)
- 挙筋腱膜(がんけんけんまく)
- 瞼板(けんばん)
通常は目を見開く際に、「眼瞼筋肉が収縮→挙筋腱膜に伝わる→瞼板が引っ張られる」一連の動作により、上まぶたが上がります。
加齢により、3つの組織が弱くなると眼瞼下垂が発生してきます。
- 挙筋腱膜が薄く伸びてしまう
- 眼瞼挙筋や挙筋腱膜、瞼板の結合が弱くなる
この2点が主となり、上まぶたが開けにくくなってきます。
症状は次のように進行していきます。
眼科に受診
眼瞼下垂の気になる症状が現れ出せば、眼科に受診します。
1.診察では上まぶたの縁から2mm以上瞳孔に掛かっていれば眼瞼下垂の疑いがあります。
2.眉毛を指で押さえて固定したまま、普通に目が開けるか確認します。
3.眉間にシワを寄せたままで、まぶたが開けるか確認します。
4.他の病気の有無や服用している薬も診断には大切です。
眼瞼下垂と似た病気に「眼瞼皮膚弛緩症」や「重症筋無力症」もあります。
いずれにしても、しっかりと眼科に受診しましょう。
眼瞼下垂の治療
眼瞼下垂の根本的な治療法は手術のみです。投薬やリハビリなどの保存療法はありません。
まぶたのストレッチや筋肉を鍛えるような民間療法もありますが、効果は定かではなく悪化させることもあるので注意してください。
一時的な対処療法としては医療用のテープや接着剤を使用して、上まぶたを上げる方法もあります。また、眼鏡のフレームにバネを装着すると上まぶたを開きやすくなる「クラッチ眼鏡」もあります。
いずれにしても、経度であれば有効的な方法です。
また、ハードコンタクトレンズが原因であれば、装着をやめることが大切です。眼鏡やソフトコンタクトに切り替えて様子を見ます。
眼瞼下垂は症状があっても生活に支障をきたしたり、上まぶたが視界を遮るような状態でなければ、積極的な手術は不要です。
眼瞼下垂の手術はメスなどで切開する必要があり、リスクや失敗があるのも確かです。今一度、本当に必要か医師と相談の上で決定してください。なお、手術には健康保険が適応されます。
眼瞼下垂の手術は主に2種類あります。
眼瞼挙筋が正しく収縮できるのであれば「挙筋短縮術」を選択します。収縮ができないなら「前頭筋つり上げ術」になります。
挙筋短縮術
上まぶたの皮膚を切開し、挙筋腱膜の丈夫な部分を選んで、瞼板に糸で縫います。
前頭筋つり上げ術
眉毛の上とまつげの上の2ヶ所の部分を切開します。自家組織である「大腿筋膜」や脳外科手術で使われる「人工硬膜」を使用して、おでこの筋肉(前頭筋)と瞼板を繋ぎます。
これにより、おでこの筋肉を利用して、上まぶたが上がるようになります。
クリニック選び
眼瞼下垂の診断は全ての眼科医が行えますが、手術に関しては知識や経験、技術を持つ医師選びが重要です。
眼科医であり、眼形成分野やまぶたの解剖学に精通している医師を見付けてください。
また、医師にこれまでの眼瞼下垂手術を執刀した症例数を尋ねれば答えてくれるはずです。
1.眼科で診察や検査(眼底検査、視力検査、眼圧検査、視野検査)をします。
手術は生活や視力に支障が出る場合は検討します。医師に分からないことはしっかりと聞いてください。
2.後日、手術が必要な場合は外来の日帰りで可能です。症状によっては、入院が必要な場合もあります。医師の指示に従ってください。
3.手術前に局所麻酔をまぶたに打ちます。
4.手術時間は片目に付き1時間程度です。
通常は片目ずつ手術をします。腫れが引いた後に、後日もう片目を手術します。医療機関によっては、両目を同時に行う場合もあります。
なお、皮膚の切開には通常のメスが使われますが、医療機関によっては、炭酸ガスレーザーや高周波メスで行う方法もあります。
5.手術後は1~3ヶ月はまぶたが腫れます。徐々に治まってきます。
6.術後の検診は欠かさず受けましょう。
今までの眉毛やおでこを上げて瞬きをしていた人は、手術後も癖は残ります。新しいまぶたの環境に体が慣れてくれば、自然と改善していきます。
注意点
加齢によるまぶたのたるみには眼瞼下垂の他にも眼瞼皮膚弛緩症と呼ばれる病気もあります。両方とも合併していることもあります。
症状によっては眼瞼下垂の手術と併せて眼瞼皮膚弛緩症の手術も必要になります。
眼瞼皮膚弛緩症の手術は眉毛の下のたるみ部分を紡錘形(ぼうすいけい)に切り取り、縫合します。
眼瞼下垂により二重まぶたの幅が広がったり、三重になることを気にして、手術を受ける人もいます。この場合は元々の二重瞼に戻る保障はありません。その点も手術で配慮して貰えるように医師と相談してください。
美容外科で眼瞼下垂の手術をする場合は見た目重視に手術をして貰えます。しかし、タルミ取りや二重瞼の整形など不必要な手術を勧められることもあります。本当に必要か慎重に決めてください。
坑凝固薬や坑血小板薬を服用している人は薬の影響により、手術時の出血が多くなります。事前に医師に申告して、服用の中断など指示に従ってください。
手術後は目の印象やまぶたの形は変わります。事前にどのようになるか医師と相談してください。見た目が変わり、納得できなくても後戻りはできません。
ドライアイの症状がある人は術後まぶたがしっかりと開くようになるため、悪化することもあります。瞬きを意識してしっかりと閉じるように意識付けてください。また、必要に応じて点眼薬を使用します。
眼瞼下垂は手術後に再発するケースもあります。再度、挙筋腱膜が薄くなってくると、上まぶたがたるみ始めます。その場合、再手術も必要です。
眼瞼下垂のまとめ
眼瞼下垂は多かれ少なかれ、年齢を重ねることにより避けて通れない病気です。
但し、眼瞼下垂であっても多くの人は、そのまま生活しています。生活や視力に余程の支障があれば、手術を検討することも必要です。
手術は失敗しないためにも、知識や経験、技術があり、信頼できる医師を見付けてください。
眼瞼下垂が良くことを願っています。
*この記事は適切な医療情報を元に正しい内容を掲載しています。原因や症状、治療やに対しての知識として参考にしてください。