ベンゾジアゼピンからの適切な離脱や減薬方法
ベンゾジアゼピンは短期間の服用に限れば高い有効性が期待できます。
しかし、服用長期間続けていると「耐性」が起き効きづらくなることもあります。
また、服用しないと不安になる「精神的依存」や薬を減らすと離脱症状が起こる「身体的依存」などのリスクもあります。
服用を開始したのであれば、やめるプロセスもしっかりと組み立てて適切に使用しましょう。
このページでは、ベンゾジアゼピンの断薬方法を詳しく解説していきます。
睡眠薬を上手にやめる方法
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や安定剤を服用している方は、離脱症状は避けて通れない副作用です。多かれ少なかれ離脱症状は発生します。
特に、薬を高用量に服用していた方や長期間服用していた方は、離脱症状も強く+長く続く傾向にあります。
そのため、ある程度の離脱症状は覚悟する必要があります。これを乗り越えることによって、断薬は可能になります。
離脱症状は、主に不安やイライラ、反跳性不眠の2つが大部分です。
不安やイライラは翌日から数日程度で消失していきますが、不眠症は中々頑固で長期間続く傾向にあります。
特に、断薬直後の不眠症は厄介で寝付くことがままならず、断薬を断念してしまう傾向にあります。
そうならないためにも、一気に断薬するのではなく、最低限に寝付ける範囲まで減薬して、そこから一気に断薬することが大切です。
抗うつ剤や安定剤、睡眠薬など同時に服用している薬が多い場合は、まず順番に薬を断薬していきます。
まず、抗うつ剤を断薬してから、次に安定剤を断薬します。最終的に睡眠薬だけを残します。
一気に薬をやめると、長く離脱症状が続く傾向にありますので、減薬しながらある程度の部分まで減らせたら一気に断薬することが大切です。
断薬中の注意点
断薬中は、アルコールなどの摂取はやめましょう。ベンゾジアゼピンはキャバ受容体に作用し不安や鎮静作用をもたらします。同様にアルコールも、ギャバ受容体に作用するため、断薬中はアルコールを飲んではいけません。
ベンゾジアゼピンの減薬や断薬を実行している最中に、知らず知らずにアルコールを服用している人も多くいます。
しかし、断薬が上手くいかない原因になります。そのため、禁酒は絶対条件です。
また、投薬中であってもベンゾジアゼピンとアルコールを同時に服用すると、依存性が耐性が強く現れるため注意が必要です。
睡眠薬をアルコールと服用していると、薬が効かなくなり不眠症が重症化する傾向にあります。
これらの注意点は、薬局などから貰える薬の添付文書でも掲載されていますが、見落としている人も多いのが現状です。
また、断薬中はカフェインなどの摂取も控える方が良いです。カフェインには覚醒作用があるため、知らず知らずのうちにコーヒーなどを飲むと寝付けない原因になります。特に断薬中は、僅かな環境因子にも左右されがちですので、マイナス部分は取り除きましょう。
カフェインを含む飲料には、コーヒーだけではなく緑茶も存在します。チョコレートなどにも含まれているため大量に摂取することは控えてください。
断薬しやすい薬
ベンゾジアゼピンに比べて非ベンゾジアゼピンは、依存性や耐性の部分が緩和されてると考えられています。
しかし、臨床的に見てそれほど大差がないのが現状です。
マイスリーやルネスタであっても依存性が耐性は存在します。長期間服用した際に、突然断薬すれば眠れなくなることは確実でしょう。
ベンゾジアゼピンに比べれば、若干やめやすい傾向にありますが、それほど大差はないと把握すべきです。
また、超短時間型や短時間型の睡眠薬は、反跳性不眠の起きやすい傾向にあります。それに比べて、中時間型や長時間型の睡眠薬はそれほど心配ないと考えられてます。しかし、臨床的に見るとどちらの薬も大差があるようには感じられません。
ハルシオンやマイスリーを服用していた方が、ユーロジンやネルボンに変更したからといって断薬できるかと言えば、また別の話です。結局は、どの薬であってもやめるという意志が大切であり、その気持ちがあれば断薬しやすい薬に大差はありません。
依存に陥りやすい人
不思議ですが、同じ睡眠薬でも依存に陥りやすい人と陥りにくい人がいます。体格がしっかりして、普段から力仕事しているような人は、薬をすぐにやめれる傾向にあります。逆に神経質な人や不安などに弱い人は、睡眠薬がいつまでたってもやめれずに長期間服用する傾向にあります。
しかし、だからといって断薬ができないかといえばそうではありません。しっかりとやめる意思や適切な減薬や断薬方法ががあれば誰でも可能です。
多種類の薬を高用量に長期間服用してきた人であっても、順番に減薬しながら断薬すれば、また自分の力で自然に寝付くことができるようになります。
余談ですが、妊娠した女性はお腹の子のこと考えて、それまで依存症であった人であっても10割に近い方が確実に断薬します。やはり母の力というものは偉大だと感じました。
また、ベンゾジアゼピンを高用量に服用することをOD(オーバーデュース)と言います。沢山の薬を一気に服用して、薬が効きすぎたり、場合によっては昏睡状態に陥ることがあります。こういったことは絶対に行ってはいけません。しかし、現実的にODをして救急搬送される方もいます。
男性はあまりODすることはありませんが、女性は特にこの傾向にあるので十分に注意してください。背景には社会的に見ても女性の立場がまだまだ弱いという部分でのストレスや女性の方が依存しやすいという面からもODをしてしまうのが現実です。
代替え薬の存在
ベンゾジアゼピンをやめる際にメラトニンを服用する方法があります。メラトニンは日本では販売されていませんが、海外では簡単に入手できるため個人輸入している方も多いです。
ベンゾジアゼピンを減薬しながらメラトニンを服用して最終的に断薬するという方法です。しかしこれも、あまり効果がないのが現状です。メラトニンを服用すると眠気が出て1時間程度持続しますがすぐに効果は消失して寝付けなくなります。また、ベンゾジアゼピンと作用機序が全く違うため、それを補うことは容易ではありません。
更に、別の薬で代替えししても、薬を飲むということが意識付けられている限りは、精神的依存は中々克服できません。
しっかりと、自分で断薬出来たという結果と記憶を植え付けることにより精神的依存は克服できます。また、自分の力で断薬できた場合は、再び依存に陥る傾向はかなり少なくなります。
最後に
ベンゾジアゼピンを長期間服用して、急に断薬すると全く寝付けなくなります。そのため、薬がないと眠れないといった間違った認識をしてしまいがちです。
しかし、人間は本来自然に寝付くという力は存在しています。ここ数十年で睡眠薬が登場して、服用する人が増えました。しかし、それ以前は睡眠薬は世の中に無く眠れないという方は存在していません。
つまり、睡眠薬がなくても眠れるということを改めて認識することも大切です。自分が体に入れなければ、離脱症状が起きて、本来自分で寝付く力がよみがえることは確実です。しっかりと、断薬する強い意志を持ちましょう。
ベンゾジアゼピンからの適切な離脱や減薬方法はベンゾジアゼピン断薬マニュアルの第ニ章に執筆されていた内容です。この記事は「心の治療ナビ」で公開していた文章を当サイトに掲載しています。